このシリーズも人気があり、放送回数ランキングでは明智小五郎を抜いて1位となった。シリーズ第1弾は「ブルートレイン寝台特急殺人事件」(1979年10月20日放送)である。西村京太郎の作品はおもに鉄道を舞台としており、列車内で起きた殺人事件や列車を利用した身代金の受け渡しなど内容は様々である。なかでも列車を利用したアリバイトリックに挑むパターンに人気が集中する。
主役は警視庁捜査一課の十津川省三警部(三橋達也)と“カメさん”こと亀井定夫刑事(愛川欽也)で、これに部下が加わる。ではここで他局のキャスティングを見てみよう。まずTBSであるが当初は若林豪-坂上二郎であったらしいが、現在は渡瀬恒彦-伊東四郎である。また、CXが小野寺昭-?(よく知らない。川谷拓三だったような気がする。)、テレ朝の火曜ミステリー劇場(今はない)が高橋英樹-いかりや長介であった。
原作を相当読んでからテレビを見た人にとっては、三橋達也の十津川警部は年を取りすぎていて違和感があるようである。確かに設定年齢からすればTBSのキャスティングが最もよいということになるが、三橋の
「カメさん、我々も乗ってみようじゃないか。」
と言うときの独特の渋さが味わい深くしており、キンキンとのコンビも絶妙で非常に見ごたえがある。常識を覆すようなキャスティングながらも、ぴったりはまってしまい、逆にこれが一番いいじゃねーかとなってしまうのが土曜ワイド劇場のすばらしいところで他の番組がまねできないところでもある。
なお、1・2・4作目は制作会社が異なり厳密には別シリーズである。これら3作品にはキンキンは登場せず、代わりに週刊「レディ」の記者・青山亜希子として樋口可南子が出演している。また、「東北新幹線殺人事件」(1984年7月14日放送)は三橋が入院したため、十津川役は天知茂が務めた。最近でも三橋の代わりに高島忠夫がやったことがあった(1995年10月7日放送)がこれは最悪であった。推理をするのはカメさんだけで、十津川警部はただ頷きながら聞いてるだけ。しかも、いつものかっこいい警部ではなく、カメさんの推理に驚いちゃってる始末で、立場が完全に逆転してしまっていた。さらに、その頷き方が大きすぎるのと、電話での応対が不自然すぎるのとで見苦しいこと極まりなかった。逆に「キンキンって結構演技うまいんだなぁ」と気付かされたぐらいである。
主役の話はこのへんにして、次に他の出演者に注目してみよう。まず、西本刑事は森本レオ、清水刑事は井川晃一、北條刑事は山村紅葉である。日下刑事は現在は茂賢治であるが特に決まっていないようである。森本レオは主にキンキンと行動を共にしているため結構重要な役を担うことが多く、列車内で起きた殺人事件の現場に偶然居合わせたりすることも少なくない。番組の冒頭で犯人に接触していることも多く、後半で「カメさん! ほら、あのときの! これあのときの大学生ですよぅ。」と、気がついていないキンキンをサポートしたりする。また、「カメさん、こーゆーことは考えられませんか?」と推理を話すことにより視聴者にヒントを与えている。さらに、西本の友人が容疑者になったり、アリバイ証人になったり、誘拐されたりと数々のパターンが存在、極めつけは「特急おおぞら殺人事件」(1994年10月8日放送)で、このときは西本自身が逮捕されてしまっている。
次に犯人であるが、どちらかというと女のほうが多い。犯人のパターンというのは大体決まっており、山口果林、白島靖代、川上麻衣子、金沢碧、岡まゆみ、芦川よしみ、大場久美子などである。まぁ9時半までに登場した女の中に犯人がいると思ってまず間違いない。
出演者以外の魅力はというと何といっても主題歌である。オープニング・エンディング・BGMともに同じメロディーであるが、テンポが全く異なりうけるイメージが全く違う。さらに、曲が始まるタイミングが絶妙でイントロだけで鳥肌がたってしまう。とくに、オープニングテーマはキンキンの語りとともに雰囲気を盛り上げている。
ではオープニングのよくありがちなパターンを紹介しよう。
まず、5分程度さわりの映像が流れる。このあと列車か路線の説明をキンキンが行う。例えば「特急白山は上野を8時30分に発車。途中停車駅は大宮、高崎、……、終点金沢には14時36分に到着する。6時間6分の旅である。」といった具合である。説明時の映像は、路線図の上を読み上げた駅名に合わせて移動させていくというものであるが、さらにそのバックではうっすらと列車が走行している姿が映り込む。で、「旅である」の部分を低い声でゆっくりと言った後、向こうから列車が走ってくる映像とともに、タタタタタタタタタタタタダラララーンと音楽がスタート。この瞬間がすばらしい。
エンディングも特に決まっていないが、砂浜や海に面した岸壁、湖など水辺が多い。以下に容疑者が女性の場合の代表的なパターンを示す。
という感じである。⑩でパトカーは全車撤収してしまうが、残った三橋とキンキンがどうやって帰るのかは不明である。なお、容疑者が男性の場合は、まず⑥の途中から犯人が自供し始め、⑦で到着した人物が真犯人となる。ただし、これらはあくまで代表的なパターンであり、家政婦は見たのように毎回共通した流れということではない。
今後も同じキャスティングで継続することが望まれるが、三橋の年齢からいってもそろそろ厳しいところであろう。
放送リストの中で「寝台特急“北斗星”殺人事件」(1996年10月5日放送)は30回記念企画として放送。この作品が33作目となっているのは、キンキンが出演していない初期の3作品をテレ朝側がシリーズに含めていないためである。したがって公表データはすべて異なり、放送開始は1981年10月17日、シリーズ回数は33回ということになっている。ここでは、これらの3作品に三橋が出演し、役名も十津川であることから含めている。
この文章は、1999年03月27日に公開されたものです。