考古学者シリーズ

::概説

このシリーズは考古学者でありながら名探偵の相田博士と須田警部補が繰り広げる、コメディータッチのミステリーである。相田博士は元教え子の主催するパーティーに招待され、その会場で殺人事件が発生。須田警部補と協力し事件を解決に導く。相田博士は発掘した古代人の道具をヒントにトリックを解明し、出生の秘密などを絡めながら意外な犯人像を浮かび上がらせる。

::出演者

主役は考古学者の相田古志郎博士(愛川欽也)と須田熊五郎警部補(黒沢年男)である。須田警部補は横浜県警管轄の警察署を転々としており、当初藤沢北署に籍を置いていたが、その後茅ヶ崎北署、横浜南署などへ異動、現在は横浜港署勤務である。なお、3回ほど黒沢が休んだことがあり、このうち「人恋橋、幽霊殺し」(1994年4月30日放送)は原田大二郎が須田として、そのほか2回は松崎しげるが須田の同僚・戸田警部補として出演している。なお、このとき須田は見合いをしているという設定であった。

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次に、準主役として忘れてならないのが相田の助手・若葉かおりである。初めのころは助手はいなかったと記憶しているが未確認である。その後、川島なお美が助手として登場、長らく定着していたが1995年頃から不安定になっている。まず、「女教師殺し」(1995年4月29日放送)では濱田万葉がかおりを演じたほか、その後は鳥越まりが2代目助手・沢田百合として出演している。なお、濱田万葉の役名は川島なお美時代と同じ「若葉かおり」であるものの、新人としている。また、「新妻殺し」(1991年3月23日放送)では2番弟子のゆかりという人物が代役を務めており、このときかおりは論文制作のため全国を歩いているという設定であった。

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そのほか重要な脇役として現地の警察署長とその部下、飲み屋のおやじが登場する。警察署長は毎回異なるが、坂上二郎、なべおさみ、ジェリー藤尾、荒井注などが抜擢されている。署長の部下は、キンキン主演ドラマには必ず登場する人物・井川晃一である。おやじは小鹿番・藤岡重慶・金井大らが務めた。

::ストーリー

では番組の流れをご紹介しよう。最も注目すべきはオープニングである。

  • ①キンキンが遺跡の発掘をしている。
  • ②かおりがキンキンにパーティーに行く時間であることを告げる。
  • ③キンキンは腕時計を見て慌て、「かおり君、もっと早く教えてくれなきゃ困るよ!」と怒る。
  • ④キンキンはかおりとともにジープに乗ってパーティー会場へと向かう。
  • (パーティーが始まり…)
  • ⑤出席者が注目している人物に向かって矢などが放たれる。
  • ⑥すぐに警察が到着し、関係者を集めて事情聴取を開始する。
  • ⑦警察署長が捜査の指示を出していると、キンキンが横から口を挟む。
  • ⑧署長は「何物だ、あいつは?」と部下に小声で質問し、キンキンを疑い始める。
  • ⑨そこへ横浜から被害者の家族を連れてきた須田が到着。キンキンは「来たよ、ブルドーザー。」と言い、かおりとともに慌てて隠れる。
  • ⑩年男は署長に対して「須田警部」と自己紹介し、「私が来たからにはこの事件も即解決ですなぁ。」と自信たっぷりに言う。
  • ⑪しかし、署長は「あーそう、ご苦労さん。帰っていいよ。」と相手にしない。
  • ⑫年男は「この私をご存知ない!? まぁ知らなくても当然でしょうなぁ。」とでかい声で言い、「私は謙虚な男なんで自分を自慢するのは嫌なんだが…」と断ってから自分は今までに数々の有名な難事件を解決してきたと説明する。
  • ⑬署長が「あの事件は何とかいう素人探偵が解決したと聞いとるが…?」と信じようとしないため、「あぁ、相田博士のことですか。あれはマスコミがそうしたんですよ。素人探偵のほうが大衆受けしますからなぁ。」と言い、博士はあくまで協力者で解決したのは自分だと主張する。
  • ⑭そこへキンキンが「須田くーん。」と手を振りながら顔を出す。
  • ⑮年男はびっくりし、「はかせー!」と言って再会を喜び、両手で握手を交わす。このとき、かおりが「これで名コンビ復活ですね!」と言う。
  • ⑯キンキンは「須田くん、警部になったのー?」と聞き、警部補なのに警部と嘘をついたことがばれる。
  • ⑰署長は「では、あなたが噂の相田博士!?」と驚き、さっきのことを謝るものの、「今回の事件は簡単に解決できる。」と自信をみせ、博士に口出ししないよう注意する。

これがオープニングの基本である。多少の違いはあるが、どの作品もほぼ同じような展開である。なお、松崎しげるの場合、⑨は「歩く日焼けサロン」と表現している。

この後、関係者全員について個別の事情聴取が行われ、キンキンとかおりは盗み聞きをする。このときキンキンとかおりが小声で会話するが、署長に見つかってしまいウォッフォン!と咳払いをされるシーンが展開される。

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次に注目すべきは飲み屋のシーンである。キンキンは年男・かおりと頻繁に居酒屋へ行き情報交換を行う。最も重要なのはキンキンと年男が再開した当日である。まず、おやじが奥から徳利を運んできて、年男を指しながら「おや?こちら見ない顔だねぇ。」と言う。かおりが「横浜から来た警部さんよ。」と説明すると「横浜っていうと例のあの事件かい?」と聞く。年男が事件の概要を説明すると、おやじが「ふーん、それじゃぁ美人○○殺しかぁ。」と番組タイトルをそのまま言う。それに対して3人声を揃えて「美人○○殺しぃ?」と聞き返すと、おやじがその地方に由来する伝説と今回の事件が似ており、またあの女の幽霊の仕業だと説明するのである。このおやじが番組タイトルをつけていると言っても過言ではない。そして最後にオヤジが「横浜の人、おなごだよ。おなごを当たってみなっ。」と決め台詞を言うと飲み屋のシーンが終了する。

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このあと事件が進展してくると、関係者の中の女性の1人がキンキンに近づいてくる。この女性はパーティーのシーンなど番組冒頭でキンキンが好きになっているのが通例である。女はキンキンをデートに誘い出し捜査の進展具合などを聞き、事件の早期解決を依頼する。その後の飲み屋のシーンでも3人が推理を話し合っているところへ女が現れることがあり、このときキンキンと年男はいつもより酒が進んでしまう。店を出たキンキン・年男と女の3人は肩を組み、大声で歌いながら遺跡発掘調査隊の宿泊所へと向かい、かおりは2人の酔いぶりに文句を言いながら1人後ろをついて歩く。ここでのキンキンと年男のテンションの高さには目をみはるものがある。宿泊所につくと年男はすぐに寝てしまい、かおりが付き添うこととなり、キンキンと女は外へ散歩しに行く。女は「先生、恐いわっ。」などと言ってキンキンに抱きつくものの、キンキンは「大人をからかっちゃぁいけないよ。」と言ってしまう。このシーンはCXのトレンディードラマとは一線を画した演出で注目に値する。

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番組中盤にキンキンの発掘シーンが流れ、ここでかおりが「こんな物が見つかりました。」と言って発掘したもの(壁画のときもあった)をキンキンに見せる。するとキンキンは「あぁこれは○○だよ。」と言って、その道具について古代人の生活を交えて語る。そして、説明しているうちにキンキンは事件に使ったトリックに気がつく。このあと事件の捜査は急展開し、キンキンと年男は分担して各地へ聞き込みに向かう。ここでまず注意したいのは、実際のトリックや聞き込みの内容について視聴者には一切教えないということである。トリックは前述の古代人の道具の説明から、聞き込みについてはキンキンらが訪れた建物などから推測することとなる。そしてもう一つ注意したいのは、聞き込みの過程で必ず産婦人科を訪れるということで、これによって犯人の出生の秘密が明らかとなる。そしてこれらの全貌はエンディングで明かされることとなる。

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最後にエンディングであるが、まずキンキンが署長に事件の関係者全員をリビングか庭に集めてもらう。そして、署長が俺より先に解決できるわけがないという顔をしながら「犯人が解ったというのは本当かね?」と聞き、「間違いじゃ済まされんよ!」と念を押す。年男が「お帰り頂いても結構ですよ」と一言言うと、「まぁせっかく来たんだから…。」と一応座る。まわりからも「この中に犯人がいるってーのか!?」と野次が飛ぶが、犯人については触れず、署長が「じゃぁ始めてくれ。」と言ったあとキンキンが「今回の一連の事件は20年前の○○氏殺害事件に端を発しています。」と説明を始める。これに対し署長は「いや、あれは自殺だよ。」と抵抗を試みるが、年男に「まぁ最後までお聞きください。」と却下される。キンキンはまずその過去の事件の真相を説明し、その復讐が今回の事件の動機であると説明する。そして、キンキンは「犯人は…、陽子さん、あなたですね。」と確認し、陽子が過去の事件の被害者の残された家族であると明かす。

次に今回の事件で用いられたトリックについて説明する。キンキンが「お入り下さい。」とだけ言うと、年男がその道の名人を名乗る年寄りを連れて登場し、トリックを実際にやって見せてから、訓練すればこのトリックを使って殺人を犯すことも可能であると証言する。年寄りが来ない場合は年男が実演しており、かなり体を張った演技を披露している。

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そして犯行方法の説明を行う。キンキンは「第1の殺人はこうなります。」と低い声で言った後、画面は犯行シーンに移り、説明が終わると署長が「第1の殺人のトリックは解ったがほかの殺人についてはどう説明するんだね?」とわざとらしく聞く。するとキンキンの顔がアップになり「第2の殺人はこうなる。」と言って、またすぐ次の犯行シーンに切り替わる。これを繰り返すが、「こうなる」と「こうなります」が必ず交互であることに注意したい。一通り説明が終わると、「しかし第2の殺人は彼女には不可能なはずだ。」と嫌味たっぷりに言う。するとキンキンは実は残された家族がもう1人おり、その人物が共犯者であると説明する。「早く教えろよ!」とまた野次が飛び、キンキンは間を置いてから「ここにいる…、由美さんです。」と言う。これにまわりの人間が驚き、署長は「証拠が無けりゃ話にならん。」と慌てて言うが、キンキンはこれには答えず、また「お入り下さい。」とだけ言う。するとかおりが証人を連れて現われ、まわりからは「その人は誰なんだ。」とざわめきが起こる(その家の家政婦を連れてきたこともあった。)。証人は、自分が陽子の本当の母親であることを明かし、それが原因で今回の事件が起こったと泣き崩れる。で、犯人は「博士のおっしゃるとおりです。」と犯行を認める。

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以上が代表的なパターンであるが大筋はどれも一緒である。犯人は常に2人以上で実は親子とか兄弟という場合がほとんど。結婚しそうな勢いの恋人同士が実は兄妹だったなんてこともあった。2人のうち少なくとも1人は若い女性で、中盤でキンキンが好きになった女性も犯人である。

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スタッフロールが回ってる間は発掘調査をしている映像が流れる。かつては年男が壷や埴輪を運ぶのを手伝い、途中でこけて空高く放り投げるところで画面が停止、著作・制作が表示され終わることが多かった。現在は、このネタはひっぱれないと感じたのかやめてしまった。

::総論

このシリーズは最近見かけないがどうしちゃったのだろうか。芝居のわざとらしさとキンキンのつけひげ、そして頻繁に飛び出す今までの放送を見ていないと絶対にわからないようなネタなど、コアなファンにはたまらない内容であった。実際にこれだけパターンが共通しているシリーズも珍しく、出演者が変わったときのフォローも丁寧で非常に楽しめる作品であった。また、サスペンスの観点から見ても、犯人当て・トリックの解明・犯行にいたった経緯すべてに力が注がれており内容も非常に濃い。このシリーズのように10時過ぎに犯人を発表してしまい、ゆっくりとわかりやすく犯罪の背景を説明していく手法は最近ではあまり見受けられない。なお、最新作の「美人エステティシャン殺し」(1997年11月22日放送)では脚本に新藤兼人が参加しておらず、全体的なストーリー展開は以前と変わらないものの極めて一般的なサスペンスとなってしまったことは否定できず残念でならない。いつか復活する日が来ることを期待するが、そのためにはアド街の放送時間がずれてくれる必要があるかも…。

この文章は、1999年03月27日に公開されたものです。