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::はじめに

テレビ朝日系で放送されている土曜ワイド劇場という番組をご覧になったことはあるだろうか。2時間ドラマの草分けで、30年以上続いている長寿番組である。

火曜サスペンス劇場など他局の2時間ドラマ枠とは一線を画したその独創的な映像表現とキャスティングには目をみはるものがある。

本サイトでは、かつて一世を風靡した土曜ワイド劇場をシリーズごとに分析するとともに、その構成・キャスティングの巧みさを解説し、その魅力を追求していくこととする。

::概説

土曜ワイド劇場は一話完結のいわゆる単発ドラマを放送する番組枠であり、現在は原則として毎週土曜日21:00~23:06にテレビ朝日系列で放送されている。このほか、クロスネットのテレビ宮崎(フジテレビ系列)でも放送されているが、こちらは2日遅れの月曜日に放送されるため「月曜ワイド劇場」という名称を用いている。

制作はテレビ朝日によるものが大半であるが、毎月1本は朝日放送が制作を担当しており、原則として毎月第3週を割り当てている。

一部の人気シリーズや番組改編期に放送される作品は15~30分延長したスペシャル版として放送されることも多く、1982年1月2日に放送された「天国と地獄の美女」は3時間にわたって放送されている。これらの作品は時間の都合上再放送されにくいので注意が必要である。

直前にスポーツ中継がある場合は、他の番組同様に最大30分程度の繰り下げが実施される。また、日本シリーズやサッカー中継などの場合、あらかじめ編成の段階で20~30分程度の繰り下げが実施されていることもある。この場合、比較的どうでもいい作品が充当されることが多い。「どうでもいい作品」というのは局側が数字(視聴率)が取れないと判断している作品のことであるが、視聴者側から見ると意外に良い作品(掘り出し物)の場合もあるので侮れない。

直後に全英オープンゴルフなどのスポーツ中継がある場合は、1時間半の短縮版として放送されることがある。この場合、新作ではなく過去に放送された作品を一部カットして対応している。最近では「おとり捜査官・北見志穂」「相棒」シリーズなどが採用されている。

デイタイムに旧作の再放送を実施している局も多く、関東では原則として毎週月~金曜日15:00~16:53と毎週土曜日12:00~13:55に「○曜サスペンス」という名称で放送している。かつては「傑作ワイド劇場」「土曜アンコール劇場」という名称を使用しており、現在でもこの名称を使用している地方局が存在する。この枠はバラエティ番組の再放送を行ったり、高校野球などの影響で放送時間が繰り上がったりとかなり流動的な編成となっている。

::歴史

土曜ワイド劇場の放送が開始されたのは1977年7月2日。当初は2時間ではなく、1時間半の単発ドラマ枠としてスタートした。当時のゴールデンタイムには30分番組も数多く存在し、ドラマは1時間というのが当たり前であった。土曜ワイド劇場は日本のテレビ界初の単発長時間ドラマ枠となったのである。

初回放送作品は「時間よ、とまれ」という作品で、出演は渥美清小林桂樹市原悦子ほか。内容は田舎刑事(渥美清)が時効寸前の殺人事件の捜査にあたり、犯人(小林桂樹)を追いつめる中で日本の戦後史を浮かび上がらせるというものである。アメリカの長編テレビ映画「激突!」に想を得たらしい。ちなみに「激突!」とは、あのスピルバーグが初めて監督をした映画で、赤い車をでかいトラックが追いかけてくるだけの単純なストーリーの映画である。なお、この作品は1995年8月5日に戦後50年特別企画としてリメイクのうえ放送されており、こちらは矢沢永吉が刑事を熱演している。

当初は文芸作品などもあって視聴率は低調気味であった。そんな中で、初の20%台を獲得しサスペンス路線を決定付けたのが「浴室の美女」(1978年1月7日放送)である。原作は江戸川乱歩の「魔術師」で明智小五郎シリーズの2作目にあたる。

こうしてサスペンス・ミステリー作品中心のラインナップに移行するとともに、1979年4月からは標準放送時間も2時間へと拡大。1980年代に入ると他局でも2時間ドラマ枠が次々と誕生するなど、その後のテレビ史を塗り替える偉大な足跡を残したのは言うまでもない。

::サスペンス、ミステリアス、そしてエロス。

かつての土曜ワイド劇場は、猟奇的な殺害シーンやグロテスクなシーンも多く、それも魅力の一つであった。しかしながら、社会情勢の変化とともに放送局が自主規制を強いられるようになっており、凶悪犯罪の増加に反比例するように減少の一途を辿った。これらのシーンを含む名作は地上波での再放送も難しい状況となっている。

また、かつては有名女優のヌードシーンも多く、土曜ワイド劇場を語る上では欠かせない定番となっていた。松尾嘉代、叶和貴子、浅茅陽子、美保純、樋口可南子…。挙げればキリがない。近年はヌードシーンも非常に少なくなっており、確実に見られるのは「混浴露天風呂連続殺人」(1997年シリーズ完結)ぐらいとなっていた。ただし、これに出演するのはAV女優中心であるうえ、官能的なシーンというわけではなく、ここで言うヌードシーンには当てはまらない。

::撮影媒体

当初はフィルム撮影の作品が多かったが、1990年代に入ると一転し、ビデオ撮影によるものが殆どを占めるようになった。現在ではフィルムで制作されることは残念ながら皆無に等しい。

一般にフィルム撮影の方が好まれるが、フィルムとビデオの違いは何なのか。それは記録方法と発色方法の違いによる色の再現域の広さが関係している。

フィルムは、絵の具と同様のいわゆる減法混色である。一般的に、黒に近い領域の表現力が豊かで奥行き感のある表現が可能とされる。一方、ビデオは加法混色であり、クリアで鮮やかな色の表現が得意とされる。フィルムはビデオに比べてガンマカーブが長いため、明暗の再現域が広いという特長があるのである。

トレンディードラマのように視聴者が主人公になったつもりで見るドラマの場合は、リアリティを追求できるビデオ撮影のほうが有利であろうが、土曜ワイド劇場の場合は事件を第三者として距離を保って見ているうえ、暗いシーンで恐怖感を誘うことができるという点でフィルムのほうが勝っているのは言うまでもない。

では、なぜビデオ撮影が台頭したのか。それは制作コストの問題である。

ビデオは撮影結果をその場ですぐにモニタリングできるうえ、エフェクトをかけるのも容易である。一方、フィルムは現像するまで撮影結果がわからないうえ、エフェクトをかけるには相当な時間と手間がかかりコストが増大するというのである。

2003年12月より地上デジタルテレビ放送が開始され、土曜ワイド劇場としては2003年12月27日放送の「牟田刑事官vs.終着駅の牛尾刑事、そして事件記者・冴子 #3 レッドライト」が初のハイビジョン制作となった。その後も徐々にハイビジョン制作へと移行し、標準画質作品としては2008年3月8日放送の「女刑事ふたり #2 赤い月連続殺人!!」(2004年制作)が最後となった。なお、地上アナログテレビ放送向けには14:9または13:9へのダウンコンバートを実施している。

::オープニング

筆者が小さい頃は、赤いスポットがアップになった後、画面いっぱいに並んだ原色のスポットが点滅し、最後に赤と水色のスポットがアップになるという映像で、血や赤色灯を連想させた。また、音楽もオーケストラとピアノの軽やかな調べが非日常的で逆に恐怖感を誘った。

しかし、1990年代前半にゆったりとした音楽と映像に衣替えしてがっかりしたものである。この頃からフィルムではなくビデオにより撮影したものが多くなり、テレ朝らしさが失われていく。ちょうどニュースステーションのオープニングが最初に変わった時と同時期である。

1998年、20周年を迎えたのを機に一新し、女の子が袴姿の男に追いかけられているという恐いものに変更した。手がけたのは佐藤嗣麻子である。袴姿の男は金田一耕助のようにも見えるが、テレ朝は「金田一は意識していない」とコメントしている。

2004年11月からは約20種類の人気シリーズのワンシーンをイラストタッチにデジタル加工し繋げた映像が使用された。

  • 法医学教室の事件ファイル(名取裕子)
  • おとり捜査官・北見志穂(松下由樹)
  • 車椅子の弁護士・水島威(宇津井健)
  • 変装婦警の殺人事件簿(片平なぎさ)
  • 西村京太郎トラベルミステリー(高橋英樹・愛川欽也)
  • 火災調査官・紅蓮次郎(船越英一郎)
  • 温泉若おかみの旅情殺人推理(東ちづる)
  • タクシードライバーの推理日誌(渡瀬恒彦)
  • 救急救命士・牧田さおり(浅野温子)
  • 牟田刑事官事件ファイル(小林桂樹)
  • 赤かぶ検事奮戦記(橋爪功)
  • ?(浅野ゆう子)
  • 事件記者・冴子(水野真紀)
  • 終着駅シリーズ(片岡鶴太郎)
  • 事件(北大路欣也)
  • 京都殺人案内(藤田まこと)
  • 家政婦は見た!(市原悦子)
  • 明智小五郎(天知茂)

2015年4月からはオープニング自体が廃止され、提供バックもダイジェストを使用するようになっている。

::エンディング

以前はシリーズごとに異なる曲を用いており、この曲を聞くのも楽しみの一つであった。しかし、1996年7月の大改編時に番組枠として共通の曲を用いることになってしまった。エンディングに関しては、火曜サスペンスと同じような雰囲気となってしまい非常にがっかりである。

エンディングというのは、

  • 船長シリーズのように、通常の生活に戻ったシーンを流した後、しんみりした音楽でエンディングを迎えるもの。
  • 温泉若おかみの旅情殺人推理のように、通常の生活に戻ったシーンを流した後、明るい音楽でエンディングを迎えるもの。
  • 西村京太郎トラベルミステリーのように、犯行自供シーンから主役2人の会話へと繋ぎ、しっとりしたテーマ曲をバックにそのままエンディングに突入するもの。
  • 赤かぶ検事奮戦記のように、とぼけた音楽で終了すると見せかけてから終了間際でフェードアウトし、実はもう一笑いあるもの。

など作品ごとにスタイルが異なっており、1つの曲で複数のシリーズのエンディングに対応させるというのはそもそも無理があるうえ、それによって作品自体の質を落としかねない。土曜ワイド劇場という枠に対する統一曲は、タイアップにはなっても視聴者に対するメリットは皆無であろう。

今までに使用されたエンディングテーマは以下のとおり。(一部例外あり)

1996年7月 1997年3月 辛島美登里 「あなたの愛になりたい」
1997年4月 1998年9月 松田聖子 「あなたのその胸に」
1998年10月 2000年3月 TRF 「JOY」
2000年4月 2002年12月 ZARD 「promised you」
2003年1月 2003年9月 ゴスペラーズ 「北極星」
2003年10月 2007年6月 Kiroro 「もう少し」
2007年7月 2010年6月 BoA 「Smile again」
2010年7月 2011年9月 森山直太朗 「花鳥風月」
2011年10月 2013年3月 熊木杏里 「今日になるから」
2013年04月 2016年09月 スキマスイッチ 「スカーレット」
2016年10月 秦基博 「70億のピース」

::スポンサー

この番組はコアなファンが多いが、スポンサーに関しても同様である。養命酒常盤薬品明和地所など10年以上提供している企業は少なくない。

そんな中で「あなたがいれっばーあぁうつむかないっでーあるいてゆけっるーこのとーきょーさばっくー」と東京砂漠を平気で流しつづけていた某建設会社が撤退したのは記憶に新しい。この曲が流れなくなってから土曜日が来たのを実感できなくなった方も多いのではないだろうか。

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