番組概要

TOP記事番組概要

::はじめに

テレビ朝日系で放送されていた「土曜ワイド劇場」という番組をご覧になったことはあるだろうか。2時間ドラマの草分けで、約40年続いた長寿番組である。

火曜サスペンス劇場など他局の2時間ドラマ枠とは一線を画したその独創的な映像表現とキャスティングには目をみはるものがある。

本サイトでは、かつて一世を風靡した土曜ワイド劇場をシリーズごとに分析するとともに、その構成・キャスティングの巧みさを解説し、その魅力を追求していくこととする。

::概説

土曜ワイド劇場は一話完結のいわゆる単発ドラマを放送する番組枠であり、原則として毎週土曜日の21・22時台にテレビ朝日系列で放送されていた。このほか、クロスネットのテレビ宮崎(フジテレビ系列)でも放送されていたが、こちらは2日遅れの月曜日に放送されるため「月曜ワイド劇場」という名称を用いていた。

制作はテレビ朝日によるものが大半であるが、年間13本は朝日放送が制作を担当しており、原則として毎月第3週を割り当てていた。

一部の人気シリーズや番組改編期に放送される作品は15~30分延長したスペシャル版として放送されることも多く、1982年1月2日に放送された「天国と地獄の美女」は3時間にわたって放送されている。これらの作品は時間の都合上再放送されにくいので注意が必要である。

直前にスポーツ中継がある場合は、他の番組同様に最大30分程度の繰り下げが実施されていた。また、日本シリーズやサッカー中継などの場合、あらかじめ編成の段階で20~30分程度の繰り下げが実施されていることもあった。この場合、比較的どうでもいい作品が充当されることが多い。「どうでもいい作品」というのは局側が視聴率が取れないと判断している捨て駒作品のことであるが、視聴者側から見ると意外に良い掘り出し物の場合もあるので侮れない。

直後に全英オープンゴルフなどのスポーツ中継がある場合は、1時間半の短縮版として放送されることがある。この場合、新作ではなく過去に放送された作品を一部カットして対応している。最近では「おとり捜査官・北見志穂」「相棒」シリーズなどが採用されている。

デイタイムに旧作の再放送を実施している局も多く、関東では「傑作ワイド劇場」「土曜アンコール劇場」「○曜サスペンス」などの名称で放送していた。この枠はバラエティ番組の再放送を行ったり、高校野球などの影響で放送時間が繰り上がったりとかなり流動的な編成となっている。

::歴史

土曜ワイド劇場の放送が開始されたのは1977年7月2日。当初は2時間ではなく、1時間半の単発ドラマ枠としてスタートした。当時のゴールデンタイムには30分番組も数多く存在し、ドラマは1時間というのが当たり前であった。土曜ワイド劇場は日本のテレビ界初の単発長時間ドラマ枠となったのである。

初回放送作品は「時間よ、とまれ」という作品で、出演は渥美清、小林桂樹、市原悦子ほか。内容は田舎刑事(渥美清)が時効寸前の殺人事件の捜査にあたり、犯人(小林桂樹)を追いつめる中で日本の戦後史を浮かび上がらせるというものである。アメリカの長編テレビ映画「激突!」に想を得たらしい。ちなみに「激突!」とは、あのスピルバーグが初めて監督をした映画で、赤い車をでかいトラックが追いかけてくるだけの単純なストーリーの映画である。なお、この作品は1995年8月5日に戦後50年特別企画としてリメイクのうえ放送されており、こちらは矢沢永吉が刑事を熱演している。

当初は文芸作品や邦画などもあって視聴率は低調気味であった。そんな中で、初の20%台を獲得しサスペンス路線を決定付けたのが「浴室の美女」(1978年1月7日放送)である。原作は江戸川乱歩の「魔術師」で明智小五郎シリーズの2作目にあたる。

こうしてサスペンス・ミステリー作品中心のラインナップに移行するとともに、1979年4月からは標準放送時間も2時間へと拡大。1981年には月曜20時に新たな邦画専門枠「ゴールデンワイド劇場」を編成して邦画を分離することで、サスペンス路線をより鮮明にした。この頃になると他局でも2時間ドラマ枠が次々と誕生し、その後のテレビ史を塗り替える偉大な足跡を残したのは言うまでもない。

「ゴールデンワイド劇場」は邦画に加えて徐々に2時間ドラマも放送するようになり、1982年には放送時間を21時に繰下げて「月曜ワイド劇場」とし、不倫サスペンスや嫁姑対決ドラマなどを中心としたランナップに移行した。1985年、「ニュースステーション」の放送開始に伴って再び20時に繰上げされるが、これが仇となって翌年放送終了に追い込まれている。

1988年、火曜20時に2時間の総合エンタメ枠「火曜スーパーワイド」を編成。バラエティ番組やホームドラマなど多彩なラインナップであったが、若手を主演に起用した軽いタッチのミステリードラマも放送されるようになった。1990年にはミステリー中心のラインナップに変更して「火曜ミステリー劇場」となったものの、野球中継で休止することが多いことや、火曜サスペンス劇場とバッティングしていることなどからあまり定着せず、翌年には放送終了となった。

1996年、「土曜ワイド劇場」は大幅リニューアルし、共通エンディングテーマの導入、フィルム撮影の排除などを行った。また、共通ガイドラインに沿ってパターン化されたシリーズ物を乱発するようになる。

2003年に地上デジタル放送が開始され、徐々にハイビジョン制作に移行。その後、約5年かけて標準画質制作作品のストックを消化している。

2012年には標準放送時間を2時間15分に拡大(一部の局は15分短縮バージョンを使用)した。

2016年、放送枠としての「土曜ワイド劇場」は幕を下ろし、2時間の総合エンタメ枠「土曜プライム」へとリニューアル。「土曜ワイド劇場」という名称は、「土曜プライム」で2時間ドラマを放送する際に引き続き使用されるようになる。

2017年、土日の夜に報道番組を編成するため「土曜プライム」も終了。新たに日曜朝10時に2時間の総合エンタメ枠「日曜ワイド」を設定した。「日曜ワイド」はテレビ朝日単独制作となったため、「土曜プライム」終了間際にはABC制作作品のストックを大量放出している。「日曜ワイド」開始当初は過去作品の再編集版を中心に放送していたが、その後は「土曜ワイド劇場」の未放送作品の再編集版に加えて人気シリーズの続編もいくつか制作されている。ただし、制作費が大幅に削減されたため、レギュラーメンバーを減らす、地方ロケをなくして東京近郊で代用するといった工夫が見られるほか、東映においては2本撮りで乗り切るという作戦に出ている。また、放送開始前から懸念されていたことではあるが、地方局における高校野球中継は例年どおり行われたため遅延ネットが多発。10月には半年後の廃枠が決定的になったとみられ、それ以降は実験的な新作を制作して凌いでいる。

2018年、「日曜ワイド」を終了し、新たに日曜9時に2時間の総合エンタメ枠「日曜プライム」を設定した。バラエティ、映画、スペシャルドラマなどを放送しており、2時間ドラマについては毎月1、2本程度が放送されている。

1977年7月 「土曜ワイド劇場」放送開始
1979年4月 「土曜ワイド劇場」の標準放送時間を2時間に拡大
1981年10月 「ゴールデンワイド劇場」放送開始
1982年6月 「土曜ワイド劇場」の直前番宣番組「今夜の推理はコレダ!」放送開始
1982年9月 「ゴールデンワイド劇場」放送終了
1982年10月 「月曜ワイド劇場」放送開始
1985年1月 「土曜ワイド劇場」の直前番宣番組のタイトルを「今夜の土曜ワイド劇場」に変更
1985年10月 「月曜ワイド劇場」の放送時間を1時間繰上げ
1986年9月 「月曜ワイド劇場」放送終了
1988年4月 「火曜スーパーワイド」放送開始
1990年3月 「火曜スーパーワイド」放送終了
1990年4月 「火曜ミステリー劇場」放送開始
1991年9月 「火曜ミステリー劇場」放送終了
1995年8月 「土曜ワイド劇場」の一部作品でステレオ放送開始(1996年4月本格導入)
1996年7月 「土曜ワイド劇場」の共通エンディングテーマ開始
2000年4月 「土曜ワイド劇場」の一部作品で字幕放送開始(2001年10月本格導入)
2003年12月 一部地域で地上デジタル放送開始
「土曜ワイド劇場」で初ハイビジョン制作作品放送
2008年3月 「土曜ワイド劇場」で最終標準画質制作作品放送
2008年6月 「土曜ワイド劇場」で番組連動データ放送開始
2009年7月 「土曜ワイド劇場」の一部作品で解説放送開始
2011年7月 一部地域を除き地上アナログ放送終了
2012年10月 「土曜ワイド劇場」の標準放送時間を2時間15分に拡大
2015年4月 「土曜ワイド劇場」の共通オープニング廃止
2016年4月 「土曜プライム」放送開始
(「土曜ワイド劇場」は1コンテンツとして継続)
2017年4月 「土曜プライム」放送終了
「日曜ワイド」放送開始
2017年12月 TVer・テレ朝動画での見逃し配信開始
2018年3月 「日曜ワイド」放送終了
2018年4月 「日曜プライム」放送開始

::サスペンス、ミステリアス、そしてエロス。

かつての土曜ワイド劇場は、猟奇的な殺害シーンやグロテスクなシーンも多く、それも魅力の一つであった。しかしながら、社会情勢の変化とともに放送局が自主規制を強いられるようになっており、凶悪犯罪の増加に反比例するように減少の一途を辿った。これらのシーンを含む名作は地上波での再放送も難しい状況となっている。

また、かつては有名女優のヌードシーンも多く、土曜ワイド劇場を語る上では欠かせない定番となっていた。松尾嘉代、叶和貴子、浅茅陽子、美保純、樋口可南子…。挙げればキリがない。近年はヌードシーンも非常に少なくなっており、確実に見られるのは「混浴露天風呂連続殺人」(1997年シリーズ完結)ぐらいとなっていた。ただし、これに出演するのはAV女優中心であるうえ、官能的なシーンというわけではなく、ここで言うヌードシーンには当てはまらない。

::撮影媒体

土曜ワイド劇場は映画会社が制作していることが多いため当初はフィルム撮影の作品が多数を占めた。しかし、1990年代に入ると一転してビデオ撮影によるものが殆どを占めるようになり、1995年頃までにフィルム撮影は完全に姿を消している。

ビデオ撮影への切替が急速に進んだ理由としては、テレビ制作会社の参入が相次いだことやビデオテープの価格が下落したこと、その他に制作コストや保管コストの問題が挙げられる。ビデオは撮影結果をその場ですぐにモニタリングできるうえ、エフェクトをかけるのも容易である。一方、フィルムは現像するまで撮影結果がわからないうえ、エフェクトをかけるには相当な時間と手間がかかりコストが増大するのである。また、フィルムはビデオテープに比べて嵩張ることや劣化が激しく保管に気を使う(ただし厳重に管理された環境で長期保存するなどフィルムが有利となるケースもあり得る)ことなどからテレビ局で敬遠されるようになり、納品もビデオテープに限定されるようになった。なお、その後もフィルム撮影に拘って制作する作品についてはネガテレシネを行うのが一般的となり、細かい編集作業はビデオ変換後に行うようになっている。

一般にフィルム撮影の方が好まれるが、フィルムとビデオの違いは何なのか。それは記録方法と発色方法の違いによる色の再現域の広さが関係している。

フィルムは、絵の具と同様のいわゆる減法混色である。一般的に、黒に近い領域の表現力が豊かで奥行き感のある表現が可能とされる。一方、ビデオは加法混色であり、クリアで鮮やかな色の表現が得意とされる。フィルムはビデオに比べてガンマカーブが長いため、明暗の再現域が広いという特長があるのである。

トレンディードラマのように視聴者が主人公になったつもりで見るドラマの場合は、リアリティを追求できるビデオ撮影のほうが有利であろうが、土曜ワイド劇場の場合は事件を第三者として距離を保って見ているうえ、暗いシーンで恐怖感を誘うことができるという点でフィルムのほうが勝っているのは言うまでもない。

なお、近年では撮影機材や編集機材のデジタル化に伴って飛躍的に進化しており、これらの問題は解消されつつある。

2003年12月より地上デジタルテレビ放送が開始され、土曜ワイド劇場としては2003年12月27日放送の「牟田刑事官vs.終着駅の牛尾刑事、そして事件記者・冴子 #3 レッドライト」が初のハイビジョン制作となった。その後も徐々にハイビジョン制作へと移行し、標準画質作品としては2008年3月8日放送の「女刑事ふたり #2 赤い月連続殺人!!」(2004年制作)が最後となった。なお、地上アナログテレビ放送向けには14:9または13:9へのダウンコンバートを実施している。

::オープニング

筆者が小さい頃は、赤いスポットがアップになった後、画面いっぱいに並んだ原色のスポットが点滅し、最後に赤と水色のスポットがアップになるという映像で、血や赤色灯を連想させた。また、音楽もオーケストラとピアノの軽やかな調べが非日常的で逆に恐怖感を誘った。

しかし、1990年代前半にゆったりとした音楽と映像に衣替えしてがっかりしたものである。この頃からフィルムではなくビデオにより撮影したものが多くなり、テレ朝らしさが失われていく。ちょうどニュースステーションのオープニングが最初に変わった時と同時期である。

1998年、20周年を迎えたのを機に一新し、女の子が袴姿の男に追いかけられているという恐いものに変更した。手がけたのは佐藤嗣麻子である。袴姿の男は金田一耕助のようにも見えるが、テレ朝は「金田一は意識していない」とコメントしている。

2004年11月からは約20種類の人気シリーズのワンシーンをイラストタッチにデジタル加工し繋げた映像が使用された。

  • 法医学教室の事件ファイル(名取裕子)
  • おとり捜査官・北見志穂(松下由樹)
  • 車椅子の弁護士・水島威(宇津井健)
  • 変装婦警の殺人事件簿(片平なぎさ)
  • 西村京太郎トラベルミステリー(高橋英樹・愛川欽也)
  • 火災調査官・紅蓮次郎(船越英一郎)
  • 温泉若おかみの旅情殺人推理(東ちづる)
  • タクシードライバーの推理日誌(渡瀬恒彦)
  • 救急救命士・牧田さおり(浅野温子)
  • 牟田刑事官事件ファイル(小林桂樹)
  • 赤かぶ検事奮戦記(橋爪功)
  • ?(浅野ゆう子)
  • 事件記者・冴子(水野真紀)
  • 終着駅シリーズ(片岡鶴太郎)
  • 事件(北大路欣也)
  • 京都殺人案内(藤田まこと)
  • 家政婦は見た!(市原悦子)
  • 明智小五郎(天知茂)

2015年4月からはオープニング自体が廃止され、提供バックもダイジェストを使用するようになっている。

::エンディング

エンディングテーマは、以前はシリーズごとに異なる曲を用いており、この曲を聞くのも楽しみの一つであった。しかし、1996年7月の大改編時に番組枠として共通の曲を用いることになってしまった。エンディングに関しては、火曜サスペンスと同じような雰囲気となってしまい非常にがっかりである。

エンディングというのは、

  • 船長シリーズのように、通常の生活に戻ったシーンを流した後、しんみりした音楽でエンディングを迎えるもの。
  • 温泉若おかみの旅情殺人推理のように、通常の生活に戻ったシーンを流した後、明るい音楽でエンディングを迎えるもの。
  • 西村京太郎トラベルミステリーのように、犯行自供シーンから主役2人の会話へと繋ぎ、しっとりしたテーマ曲をバックにそのままエンディングに突入するもの。
  • 赤かぶ検事奮戦記のように、とぼけた音楽で終了すると見せかけてから終了間際でフェードアウトし、実はもう一笑いあるもの。

など作品ごとにスタイルが異なっており、1つの曲で複数のシリーズのエンディングに対応させるというのはそもそも無理があるうえ、それによって作品自体の質を落としかねない。土曜ワイド劇場という枠に対する統一曲は、タイアップにはなっても視聴者に対するメリットは皆無であろう。

なお、今までに使用されたエンディングテーマは以下のとおり。(一部例外あり)

1996年7月~1997年3月 辛島美登里 「あなたの愛になりたい」
1997年4月~1998年9月 松田聖子 「あなたのその胸に」
1998年10月~2000年3月 TRF 「JOY」
2000年4月~2002年12月 ZARD 「promised you」
2003年1月~2003年9月 ゴスペラーズ 「北極星」
2003年10月~2007年6月 Kiroro 「もう少し」
2007年7月~2010年6月 BoA 「Smile again」
2010年7月~2011年9月 森山直太朗 「花鳥風月」
2011年10月~2013年3月 熊木杏里 「今日になるから」
2013年4月~2016年9月 スキマスイッチ 「スカーレット」
2016年10月~2017年4月 秦基博 「70億のピース」

::スポンサー

この番組はコアなファンが多いが、スポンサーに関しても同様である。養命酒常盤薬品明和地所など10年以上提供している企業は少なくない。

そんな中で「あなたがいれっばーあぁうつむかないっでーあるいてゆけっるーこのとーきょーさばっくー」と東京砂漠を平気で流しつづけていた某建設会社が撤退したのは記憶に新しい。この曲が流れなくなってから土曜日が来たのを実感できなくなった方も多いのではないだろうか。

TOP記事番組概要